語楽カフェ

趣味としての外国語学習

2008-08-14

[]049号 「お金を使わない英語勉強法」 12:00 049号 「お金を使わない英語勉強法」 - 語学の虎の巻 [書評]英語・外国語学習法 を含むブックマーク はてなブックマーク - 049号 「お金を使わない英語勉強法」 - 語学の虎の巻 [書評]英語・外国語学習法 049号 「お金を使わない英語勉強法」 - 語学の虎の巻 [書評]英語・外国語学習法 のブックマークコメント

 

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英語・仏語・伊語 トリプル三冠王による

語学の虎の巻 [書評] 英語・外国語学習法  - 049号 -

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こちらです。

http://shibutora.g.hatena.ne.jp/melma/20070620

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■今週の本 「お金を使わない英語勉強法」

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買う??: ★★☆☆☆

24ページからの「お金を使わずに英語を身につける9の法則」をパラパラ

見てから買うかどうか決めましょう。

「お金を使わない英語勉強法」 小坂貴志

PHP新書 2007.11

アマゾンはこちらから。

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■内容

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序章「お金をかけない方が、生きた英語が身につきます」

自分の身近にある素材を使う。

これには二つの意味があり、一つはスタジオ録音などの音質の良い音源

だけを聞くのではなく、実際の状況に近い雑音混じりのものを聞くと言う

こと。大学受験のリスニングやTOEICでは、聞きにくかったと文句を

言えますが、実社会ではそんな言い訳は使えません。

もう一つは、自分の日常活動(仕事も含む)に密着したコンテンツを選ぶと

言うこと。外国語の理解には背景知識の理解が大きな役割を果たします。

読んで/聞いて分からなかったとき、実は外国語能力不足ではなく、背景

知識不足が原因という可能性があります。この切り分けを容易にするため

にも、身近な話題を選ぶの がよいでしょう。

「短いスパンで学習度を測る尺度として、私は『時間』をお勧めします」

(19ページ)

外国語能力の発達という質的な変化を数値化するのは難しく、そこに

投入した学習も質的な部分は数値化しにくいです。よって、「時間」を単位と

して目標を設定して、日々の進度をモニターしようというものです。

これは良いかも知れません。

「第2章 すべては音読から始まる」

「音読がすべての出発点」(45ページ)として、この章にかなりのページを

割いています。(全194ページ中35ページ)

國弘正雄氏の只管朗読も紹介されています。(本書では只管多読となって

いますが)

ただし國弘氏が同じテキストを繰り返して読むことを勧めるのに対し、

著者はむしろ乱読を勧めています。

この「同一のものを何度も繰り返す」と「次々と目先を変える」との間の

選択は、外国語学習のいろいろな場面で出てきます。

同一素材の繰り返しの方が定着するが飽きる。目先を変えると興味が

維持されて継続することが容易。ただし効果は(比較の上で)低い。

 

いくつか興味深い記述があります。

「内容理解につとめる」として、「音読のための音読になっていて、読んでは

いるが理解していないと言うことがあります」(54ページ)

発音練習(リズム、イントネーションを含め)の為の音読であれば、意味を

考えずにということもあるでしょうが、意味を理解しないとどこで文を

区切るかとか、どのような抑揚をつけるかとか分かりません。

中学で国語の宿題に「教科書を読んできて」というと、ちゃんと内容を

理解してくるのに、英語だと意味を気にせず音読だけしてくる生徒がいる

と言う話を読んだことがあります。

他方、(最近の私のお気に入りの)「言葉の処理のための脳内メモリー

許容量が小さいので、一度にたくさんのことは出来ない」という立場から

すると、発音も気にしつつ意味も取りながらというのは難しいので、

(シャドーイングでの区分に従って)発音に着目したプロソディー音読と、

内容に着目したコンテンツ音読とを意識して区分して練習するのが良い

かも知れません。

「発音を類推する」(58ページ)では、「音読により発音を類推する力が

増える」と言うものの、それ以上の説明が無く、何が言いたいのか良く

わかりません。

他方、不規則な発音ばかり目につく英語でも、実はルールに沿った単語が

多いことに気づけば、(意味が分からなくとも)「発音できる」単語が一気に

増えることになります。

「発音の矯正には音楽メソッド」(60ページ)

「外国語の歌を歌う」ことを勧める人は多いです。私もその一人です。

歌うのが好きな人にとっては「楽しい」勉強法なので「続けられる」のが

大きなメリットです。

さらに、音の連結や脱落が自然な形で覚えられるとか、リズムに乗せる

ことで日本語と異なる音節のとらえ方のイメージがつかめるなどの効果が

あるでしょう。

65ページからの「音読のコツ- 実践編」では、「(毎日の)読む時間を決める」

「速音読をする」などのアプローチが提示されています。

そういえば中学の頃は速音読をやっていました。

国語学習になれてくると、実際に音に出して練習することが減り、

シャドーイングも声に出さないシャドーイングになってしまいます。

そうすると、いざ話そうと言うときに、「口が回らない」ということに

なります。

プロの通訳の方たちも、口を滑らかにするために音読をやっているらしい

ので、私たち一般学習者はもっとやらないといけませんね。(私も反省)

第3章 シャドーイング

著者は通学時間に歩きながらリスニングやシャドーイングをやっていた

とのこと。私もやっていました。

ここで興味深かったのは、ヘッドフォンは片耳だけにして、外部の音を

あえて入れることで、「自然な」環境にしていたというところです。(最近の

インナーイヤータイプのヘッドフォンは両耳に入れると自分の声がこもって、

シャドーイングにそもそも向かないと思いますが)

また、一語聞こえたらすぐシャドーイングを始めるのではなく、数秒

遅らせて行う「時差シャドーイング」が紹介されています。これは短期

記憶の強化につながると思いますので、私もやってみようと思いました。

第4章 サイトトランスレーション

著者は3章のシャドーイングと、この4章のサイトトランスレーション

(以下サイトラ)で「第二部 応用編 『マルチ処理』で英語は確実に身に

付く」を構成しています。

サイトラは、「目で読んだ(sight)テキストを、読んだ順序のまま、多言語に

口頭で移し変えていく作業です。」(95ページ)

「I am delighted to be here....」を「光栄です/いられて/ここに」と

いう風に訳していくものです。

通訳訓練から持ち込まれているものですが、サイトラを初中級者がやるのは

危険な気がしました。

結局のところ、一語一訳語対応から抜け出せない悪しき英文和訳が語順も

整わないままに吐き出されるような気がします。

「第6章 単語力を鍛える」では、「一語一訳の呪縛から自らを解放」する

ことを目指します。

「一語一語の癖をなくし、原語本来の意味の幅を復活させるには、徹底的な

実践翻訳教育が考えられます」(128ページ)

全く同意です。

学校での英文和訳を目の敵にする主張がありますが、とらえ方に誤りが

あると思います。

翻訳的アプローチで学校の英文和訳に臨むならば、英語力は飛躍的に伸びる

と思います。

著者は「翻訳アプローチの開始として、辞書に頼るのではなく、辞書を

ひかずに文脈の中から意味を類推する方法」を提示します。

未知語であっても、四度目までは辞書を引かないというアプローチは、

私には逆に面倒な気がします。(それぞれ何回目の遭遇か覚えていられない

ですし)

気になった単語はしばし放置して、しかる後にそっと辞書を引くと言うこと

でしょう。

その場合も「辞書を『ひく』のではなく読むようにします」(134ページ)

というのは、私が実践している「ざっと訳語を読んで単語の意味の輪郭を

つかみ、しかる後に訳語を忘れるように努める」ということだろうと

思いました。

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■感想

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マルチ処理という言葉があちらこちらに出てきます。

これまで読んできた本にも出ていたのかも知れないのですが、先日

英語のメンタルレキシコン―語彙の獲得・処理・学習」を読んでから気になるようになりました。

例えば79ページの「歩きながらのシャドーイング」について、「この

『ながら勉強』ともいえる英語学習法は、実は現在流行りとなっている統合、

マルチ処理をもっとも効率よく可能にしてくれる勉強法だったのです」と、

何かをしながら(ラジオなどで)英語を聞くことを「マルチ処理」と呼んで

います。

「現在流行り」の「統合、マルチ処理」が何を指しているのか、不勉強な

私は知らないのですけれど、歩きながらの場合は、歩く行為が無意識で/

自動化されて行われているので、リスニングとメモリーのリソースの

取り合いになっていないだけなのではないでしょうか。

自動車の運転もはじめの頃は両手両足、目、耳を使うのにいっぱいいっぱい

なのですが、やがて慣れるとラジオを聞いたり、助手席の人と話をしたり

するなど余裕が出てきます。

結局のところマルチ処理と呼ぶかどうかは別として、外国語の上達とは一つ

一つの能力をしっかり身につけて次々に自動化し、メモリーを開放していく

道のりだと感じる今日この頃です。

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■おまけ

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四半期決算が終わった後、そのまま夏休みに入ってしまい、発行が

遅れました。

次はいよいよ50号。最終号(?)です。

まだまだ暑い日が続きます。お体にはくれぐれもお気をつけください。

 

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■発行者略歴

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澁澤寅彦 (しぶさわとらひこ) (ペンネームです)

1962年生まれ。福井県出身。証券会社の経理マン

 

2002年から2005年の四年間に、英仏伊の3カ国語それぞれで三冠

(ガイド試験、検定1級、EUのC2レベル試験)を達成した。

 

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メルマガ名: 語学の虎の巻[書評]英語・外国語学習法

発行者 : 澁澤寅彦 ( shibu.tora@gmail.com)

発 行  : まぐまぐID= 0000238273

配信停止 : http://blog.mag2.com/m/log/0000238273/

─著者ブログ 他─────────────────────────

『語学の方程式』(語学関連の日々の活動と発見)

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