語楽カフェ

趣味としての外国語学習

2007-10-09

[]014号 「日本人の英語」 15:27 014号 「日本人の英語」 - 語学の虎の巻 [書評]英語・外国語学習法 を含むブックマーク はてなブックマーク - 014号 「日本人の英語」 - 語学の虎の巻 [書評]英語・外国語学習法 014号 「日本人の英語」 - 語学の虎の巻 [書評]英語・外国語学習法 のブックマークコメント

 

  

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英語・仏語・伊語 トリプル三冠王による

語学の虎の巻 [書評] 英語・外国語学習法  - 014号 -

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■はじめに

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みなさん、こんにちは。寅彦です。

昨年に続き、東京マラソンに出ることになりました。

これからトレーニング開始です。

では第14号をお届けします。

このメルマガの編集方針につきましては、創刊準備号をご覧ください。

こちらです。

http://shibutora.g.hatena.ne.jp/melma/20070620

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■今週の本 「日本人の英語」マーク・ピーターセン

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買う??: ★★★★★

私が言うまでもなく、良い本です。Amazonでの読者の評価も★★★★★。

2006年4月時点で、累計73万部売れているそうです。(出典 wikipedia)

その割に、ブックオフで良く見かけるのは、後半が難しいからかも知れ

ません。(私も105円で買いました)

 

読んで頂きたい方:

中級、上級者向け。

ただし、初級の方にも、冠詞の部分(第6章まで)は大変参考になります。

 

「日本人の英語」 マーク・ピーターセン

岩波新書 1988.04  

アマゾンはこちらから

http://www.amazon.co.jp/dp/4004300185/ref=nosim/?tag=gogakunotoran-22

 

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■エッセンス

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「日本人の英語」に見られる問題点を指摘し、より英語らしい表現を

提示する本です。

 

前半の冠詞の部分がとても重要で、初級者から上級者まで参考になると

思います。

・名詞に冠詞がつくのではなく、冠詞に名詞がつくのである。

・日本人は必要ない部分にthe を付けたがる。(余分なthe症候群)

 

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■内容

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第一書のまえがきに続き、第二章は不定冠詞です。

日本の英文法書では”a(an)”の「用法と不使用」を論じるとき「名詞にaが

つくかつかないか」あるいは「名詞にaをつけるかつけないか」の問題と

して取り上げるのが普通である。ところが、これは非現実的で、とても

誤解を招く言い方である。ネイティブ・スピーカーにとって、「名詞にaを

つける」という表現は無意味である。

 英語で話すとき – ものを書くときも、考えるときも - 先行して

意味的カテゴリーを決めるのは名詞ではなく、aの有無である。その

カテゴリーに適切な名詞が選ばれるのはその次である。もし「つける」で

表現すれば、「aに名詞をつける」としかいいようがない。(12ページ)

 

これはショッキングな記述です。

名詞がまず決まって、その後にa(an)/the/冠詞無しが決まるのではなく、

その逆であると言うのです。

 

著者はさらにそれの証拠として次のように書きます。

もし食べた物として伝えたいものが、一つの形の決まった、単位制をもつ

物ならば、"I ate a …a…a hot dog!"と、aを繰り返しつつ、思い出し

ながら名詞を探していくことになる。もし、食べた物として伝えたいものが

単位制もない、何の決まった形もない、材料的な物ならば、おそらく

"I ate…uh…uh…meat!"と思いだして言うであろう。(13ページ)

 

確かに名詞が決まってから冠詞が決まるのであれば、言葉の順番と思考の

順番が異なることになります。もし名詞が先に決まるのであれば、冠詞は

名詞の後に置かれるのでしょう。

 

 

第三章は定冠詞です。

 

The international understanding is a commonly important problem in

both the West and Japan. と言う例文をあげて、最初のTheの使い方に

ついてコメントします。(21ページ)

 

Theから始まると、読者は「特定の物」という印象をまず受けるので、

それが何を指すのか分からずにイライラしてしまうと言うことです。

著者はこの誤りを『余分なthe症候群』と呼んでいます。

 

 

第四章は単数と複数です。

 

シェイクスピアの「The comedy of errors」(間違いの喜劇)という作品の

タイトルを取り上げ、

 

“the comedy of errors”という四つの言葉を、日本語に訳すように

100人に頼めば、「間違いの喜劇」という和文にする人は100人に近いで

あろう。が、逆に「間違いの喜劇」を英語に訳すように頼んだら、出て

くる英語はさまざまなはずである。(中略)組み合わせは合計25となる。

(30ページ)

 

日本語に冠詞の概念がないことから、それを英語に訳すときに冠詞を付け

るかどうかの基準を我々が持っておらず、結果的に25通りの組み合わせが

できてしまうのでしょう。

 

しかしながら著者は「冠詞と数は環境で決まる」(31ページ)と言い、

第六章でも、「冠詞の使用不使用は文脈がすべて」(48ページ)として、

読者を困らせてしまいます。

 

結局のところ、冠詞の感覚を身につけるには

 

それぞれの名詞が、a、the、無冠詞、単数、複数のどの意味的カテゴリーに

入るかを、一つひとつ確かめながら英文を読んでいくことで、冠詞と数の

意識を身につけることができるようになるのではないかと思う。(37ページ)

 

ということで、近道は無さそうです。

 

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感想

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「ネイティブはこう言います」という類の本は、必要以上にスラング

傾いたり、文化的背景に依存する表現だったりすることがあります。

「国際語としての英語にとってはそのような知識は不要」という考えの

私は、本書もそのような本かと思って避けていました。

しかしながら、少なくとも冠詞の部分については、義務教育の早い時期に

巡り会っておきたかった本だと思っています。

 

第11号でご紹介した志緒野マリ「今度こそ本気で英語をモノにしたい人の

最短学習法」では、この本について次のように書かれています。

 

(引用開始)

マーク・ピーターセンによる『日本人の英語』は、ロングセラーの名著と

いえるが、私はあまり評価していない。冠詞の区別、前置詞の区別、

単数と複数など、たしかに日本人の英語の弱点がうまく説明されている。

しかしコミュニケーションの現場では、そこを間違えても充分に通じる。

この本は、上級レベルの日本人が、より正しく、よりネイティブ・

チックに話すための本であって、まだ一人前の会話もできない人が読む

本ではない。『学校英語が悪い』とよく言われるが、私は学校英語以上に

始末の悪いのが、この『ネイティブ信仰』だと思っている。ネイティブ

崇拝、ネイティブ過大評価は、日本人の英語の自信喪失に結びついて

しまう。初心者にとっては、冠詞の区別よりも、はるかに大切なのが、

品詞の区別である。

(引用ここまで) 165ページ

 

志緒野「今度こそ~」が初級者向けに書かれていることから、本書を読む

のは後でも良いという書き方になっているのでしょう。

ネイティブ信仰批判については、過度のものについては私も同意見ですが、

国際語としての英語を追求する一方で、それを母語としている人たち・

文化についても敬意を払うという態度は必要だと思います。(船橋洋一

「あえて英語公用語論」文春新書に書かれていたと思いますが、すぐに

見つけられませんでした。また後日)

 

英文和訳が中心の学校英語教育では、日本語に訳出されない冠詞については

無視されているのではないでしょうか。

This is a pen. は、最初は「これは『一本の』ペンです」と訳されますが、

やがて「これはペンです」となり、a/the/冠詞無しの違いが訳出されなく

なります。

日本語にそのような区分がないので訳出されないものであり、結果として

その使い分けが理解されることはなく、その後英語を英語のまま理解する

ようになっても、引き続き冠詞の部分は分からないまま、理解されている

のでしょう。

英語のアウトプットを洗練するために、インプットの量を増やし、様々な

表現、ニュアンスを身に付けていくのですけれど、その過程でも引き続き

冠詞については理解が深まらないのです。

(これは英語のまま理解していると言いつつ、日本語の理解の枠組みに引っ

張られていると言うことなのかも知れません)

 

上述の「余分なthe」については、5月に見学した日本通訳学会の翻訳教育

分科会でも「日本人は意味もなく the を多用する。説明もなく初出の単語に

the が付いていると、ネイティブはとても違和感を持つ」という同様の話が

ありました。

上記の通り、英語教育の中で冠詞の使い分けに関する感覚がきちんと教え

られていないという点もあると思いますが、学校で使う例文に問題がある

のではないかと思いました。

大学入試の試験問題や、それ以外にも読解の問題で出される例文は、どこか

からか切り取られてきたものです。

元の文脈では the が使われていて問題ない状況であっても、そこから切り

取られてくるといきなり the で始まる可能性があります。

そのような文章を、英文読解の練習問題の形で大量に読んでいたとすると、

そのような the の使い方に違和感を持たなくなってしまうと言うことは

容易に想像されます。

結局のところ、文章を(切り取られた一部ではなく)最初から読み、何故

ここでは不定冠詞なのか、何故ここでは定冠詞なのかを考えながら丹念に

読むというトレーニングが必要なのでしょう。

 

志緒野「今度こそ~」では、上級になってからで良いとされている冠詞の

使い分けですが、発音の練習と同じで、学習初期にないがしろにしておいて、

後から正しいものに直すというのはかなり困難な作業ではないかと思います。

よって、初級段階で時間をかけてマスターする必要があると思います。

英語で冠詞をいい加減にやっていた私は、イタリア語やフランス語の冠詞

でも同様に苦しんでいます。

 

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■おまけ

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上に書きました翻訳教育分科会で冠詞の習得に良いとして紹介された本が

以下の二冊です。(まだ私は読んでおりません)

 

「医者が飲んでいる薬」ではありませんが、先生方の推薦する本であれば

買ってみようという気になります。(と言いつつ、まずはブックオフで探し

ます)

 

「わかりやすい英語冠詞講義」石田 秀雄 大修館書店 2002/03

http://www.amazon.co.jp/dp/4469244759/ref=nosim/?tag=gogakunotoran-22

 

「謎解きの英文法 冠詞と名詞」久野 すすむ, 高見 健一 くろしお出版

2004/06 http://www.amazon.co.jp/dp/4874243010/ref=nosim/?tag=gogakunotoran-22

 

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発行者略歴

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澁澤寅彦 (しぶさわとらひこ) (ペンネームです)

1962年生まれ。福井県出身。証券会社の経理マン

 

2002年から2005年の四年間に、英仏伊の3カ国語それぞれで三冠

(ガイド試験、検定1級、EUのC2レベル試験)を達成した。

 

好きな食べ物は イカフライ

  

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メルマガ名: 語学の虎の巻[書評]英語・外国語学習法

発行者 : 澁澤寅彦 ( shibu.tora@gmail.com)

発 行  : まぐまぐID= 0000238273

配信停止 : http://blog.mag2.com/m/log/0000238273/

─著者ブログ 他─────────────────────────

『語学の方程式』(語学関連の日々の活動と発見)

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『語学の虎の巻』(当メルマガ バックナンバー他)

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『宝庫』(語学関連以外の日々の発見)

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