語楽カフェ

趣味としての外国語学習

2007-11-20

[]019号 「屋根の上のバイリンガル19:32 019号 「屋根の上のバイリンガル」 - 語学の虎の巻 [書評]英語・外国語学習法 を含むブックマーク はてなブックマーク - 019号 「屋根の上のバイリンガル」 - 語学の虎の巻 [書評]英語・外国語学習法 019号 「屋根の上のバイリンガル」 - 語学の虎の巻 [書評]英語・外国語学習法 のブックマークコメント

 

ランキング参加中です。こちらもクリックで応援お願いします。

英語学習 ランキング

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

英語・仏語・伊語 トリプル三冠王による

語学の虎の巻 [書評] 英語・外国語学習法 - 019号 -

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

このメルマガの編集方針につきましては、創刊準備号をご覧ください。

こちらです。

http://shibutora.g.hatena.ne.jp/melma/20070620

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■今週の本 「屋根の上のバイリンガル沼野充義

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

買う??: ★★★☆☆

国語学習に疲れたときに

 

読んで頂きたい方:

「外国語=英語」と勘違いしている方

バイリンガルは偉い」と勘違いしている方

 

 

「屋根の上のバイリンガル沼野充義

白水社 (白水Uブックス) 1996.03  

アマゾンはこちらから

http://www.amazon.co.jp/dp/4560073341/ref=nosim/?tag=gogakunotoran-22

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■エッセンス

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

(本書裏表紙より) 

ロシア・ポーランド文学専攻でありながら、ハーバード大学で博士課程を

送った貴重な体験をもつ著者が、アメリカにおける東欧移民の文化や言葉の

問題、二カ国語使用者(バイリンガル)達の苦闘をユーモアたっぷりに綴った

エッセイ集。言葉の達人たちにもこんなに複雑な悩みがあったのだ。本書を

読めば外国語を学ぶ勇気が湧きます。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■内容

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

白水Uブックスの「エッセイの小径」というシリーズに入っていることから

分かるように、本書はエッセイです。

前半は「ことばの旅行術-実践編」、後半は「ことばの旅行術-理論編」と

なっています。

 

特にバイリンガルについての記述が興味深いので、それにフォーカスして

書きたいと思います。

 

バイリンガルの定義として、二つの極端な説を紹介しています。(184ページ)

 

ひとつはブルームフィールドの「二カ国語を母語と同様に操る」という

ものです。

もうひとつは、アイナー・ホーゲンの「ある一つの言語を話す者が、もう

一つの別の言語で完結した意味のある発話をすることができるようになった

時点で始まる」というものです。

後者によれば、我々日本人が「ジス・イズ・ア・ペン」と言えれば既に

バイリンガルになったと言うことになります。

バイリンガルがぐっと身近になりました。

 

他方、日本では「カッコイイもの」として見られるバイリンガルがが、

海外では必ずしもそうではないという話が紹介されます。

 

アメリカではバイリンガリズムという現象は通常、英語圏の外からやって

来た教育レベルの低い移民に特有のものとして考えられるから、それは

むしろ、英語もまともに使いこなせない教養の低さと結びつけられることが

多い。(88ページ)

 

トーヴェ・スクトナブ=カンガスは北欧においても同様の偏見が存在する

ことを力説し、バイリンガリズムは依然として貧困、無能、低い社会的

地位としばしば結びつけられている、と述べている。(中略) 自分の

マイナーな母語しか知らないモノリンガルの移民が、移民先で言語的に

同化して、その国のメジャーな言語だけを用いるモノリンガルに変身する

までに通過しなければならない一段階としてバイリンガリズムがある、

という見方である(188ページ)

 

こうなってくると、我々のバイリンガルに対する考えが混乱してくるの

ですが、次のような概念を持ちだして整理をします。

 

バイリンガルの操る二つの言語がどちらも同じくらい高い社会的地位を

持っている場合、これを「水平的バイリンガリズム」と呼び、一方が他方

よりも高い地位を持っている場合、これを「垂直的バイリンガリズム」と

呼ぶことができるが、後者はあまり尊敬されないのが普通であろう。

(182ページ)

 

また、

 

移民のバイリンガリズムが、物理的に生き延びてゆくためには選択の

余地のない、いわば「負のバイリンガリズム」だったとすれば、その

他方の極には、生活の必要に迫られたわけでもないのに、二カ国語が

自由に使いこなせるようになってしまったとでも言うような、もっと

優雅なバイリンガリズムもたしかに存在している。これがいわゆる

エリート・バイリンガリズムである。(192ページ)

 

さらに、バイリンガリズムとバイカルチュラリズムについて紹介して

います。

 

バイリンガリズムとは普通、単に二つの言語を知っているだけではなくて、

二つの異なった文化の価値体系を身につけること、つまり、二つの文化を

生きることを意味する。広い意味での文化を離れて言葉というものは存在

しえないからだ。(181ページ)

 

とする一方で、文化に全く興味を示さず、無知でありながら外国語を使い

こなす、バイカルチュラリズム抜きのバイリンガリズム、一種の「機能的

バイリンガリズム」についても紹介しています。

 

大学で仏文学をちょっとかじり、伊・英・米に生活した私ですが、

お恥ずかしながらこれらの国の文化にほとんど興味がありません。

大学時代の恩師からは「君の外国語は言葉ではない。記号だ」と言われて

やや落ち込んでいた時期もありましたが、この「機能的バイリンガリズム

という用語を知って少し元気になりました。

 

これ以外に面白かったのは

 

(136ページ)日本語に於いて人称代名詞は省略されるのではない。もともと

そんなものは必要とされていないのである。

 

(150ページ)アルバート・メラビアンという学者の論文によれば、人間

うしの日常的なコミュニケーションの際に、純粋に言葉のみによって

伝達される部分はわずか七パーセントで、残りの93パーセントは声の

調子や顔の表情、身振りなどによって伝達されているのだという。

  

英会話学校ではなく、演劇学校に行った方が効率がよいかも知れませんね。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

感想

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勉強法でも何でも、面白くないと続けられません。(仕事は?)

 

ロシア・ポーランド語など、全く私の守備範囲外で、そもそも何故に

この本を購入したのかも忘れてしまいました。

 

おそらく東京国際ブックフェア白水社のブースでタイトルに惹かれて

買ったのでしょう。

ブックフェアは多くの本が二割引になるのですが、会場までの交通費が

高いので元を取ろうとついつい買い込んでしまいます。

 

タイトルの「屋根の上のバイリンガル」が「屋根の上のバイオリン弾き」の

もじりであると最初は気づかなかったのですが、本書の前半で紹介される

イディッシュ語が「屋根の上のバイオリン弾き」の原作者ショレム・

アレイヘムを生み出したと言うところでようやくつながりました。

 

著者自身は言語学者ではないとしながらも、言語学での興味深い学説が

あちらこちらに面白おかしく散りばめられており、我々素人でもトリビア

して飲み会で使えそうです。

 

私が愛用しているのは「サピア・ウォーフの仮説」です。

「僕はイタリア語モードになると女性を口説き始めるんですよ」という

ものですが、最近の私の研究ではイタリア人モードになるためには必ずしも

イタリア語は必須ではないことが分かっております。

 

本書後半の理論編では、各章の終わりに「読書案内」として多くの本が

紹介されています。

(ロシア語の文献も混じっているのですが)興味深い本が並んでいます。

 

お薦めです。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■おまけ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

日本の海外子女教育における、二カ国語取得についての研究は、本書の

読書案内にも出ている「バイリンガルの科学」小野博 講談社ブルー

バックスに詳しいのですが、入手が難しいようで Amazonでは中古品が

定価の倍で売られています。

 

ロンドン駐在時代にこれを読んだのですが、自分に子供がいたら海外でも

現地校ではなく絶対に日本人学校に通わせるぞと思いました。

親のエゴによるバイリンガル教育の危険性が良く書かれています。

ブックオフで見つけたら即購入をお勧めします。

http://www.amazon.co.jp/dp/4062570114/ref=nosim/?tag=gogakunotoran-22

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

発行者略歴

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

澁澤寅彦 (しぶさわとらひこ) (ペンネームです)

1962年生まれ。福井県出身。証券会社の経理マン

 

2002年から2005年の四年間に、英仏伊の3カ国語それぞれで三冠

(ガイド試験、検定1級、EUのC2レベル試験)を達成した。

 

語学友(ご学友)募集中

 

─────────────────────────────────

メルマガ名: 語学の虎の巻[書評]英語・外国語学習法

発行者 : 澁澤寅彦 ( shibu.tora@gmail.com)

発 行  : まぐまぐID= 0000238273

配信停止 : http://blog.mag2.com/m/log/0000238273/

 

─著者ブログ 他─────────────────────────

『語学の方程式』(語学関連の日々の活動と発見)

http://shibutora.g.hatena.ne.jp/shibutora/

 

『語学の虎の巻』(当メルマガ バックナンバー他)

http://shibutora.g.hatena.ne.jp/melma/

 

──おまけブログ───

『宝庫』(語学関連以外の日々の発見)

http://d.hatena.ne.jp/shibutora/

 

mixi やってます

http://mixi.jp/show_friend.pl?id=632399

 

─────────────────────────────────

 

─────────────────────────────────

・無断転載はご遠慮ください

・お友達への転送はご遠慮なく

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━