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16歳で公認会計士試験合格の危うさ 時代は国際会計基準 (IFRS)らしい (その33)

 
公認会計士試験の合格発表が十五日あり、岐阜市通信制高校二年長谷川智也君(16)が、史上最年少で合格した。
高校は通信制にして、中部学院大大会計プロフェッショナルコースの聴講生になり、専門学校にも通って合格するというのが遊び盛りの高校生にとってどうなのかという議論は別として、その努力は大変なものだったと思われる。
 
他方、最初の感想は「なぜ高校生が受験できるのか」というものであった。
 
国際会計士連盟(IFAC)の国際教育基準(International Education Standards) の1号「Entry Requirements to a Program of Professional Accounting Education」には「For an individual seeking to begin a program of professional accounting education leading to membership of an IFAC member body, the entry requirement should be at least equivalent to that for admission into a recognized university degree program or its equivalent.」とある。すなわち、大学入学資格レベルを持っていなければ、会計士養成のプログラムに参加できないのである。
会計の勉強をする前に、一定の知識を身につけておかなければならないとこの後続いている。
 
上の「プログラム」というのが何を指すのか調べていないのだけれど、私の経験では「受験申し込み」が近いような気がする。
 
私は英国勅許公認会計士協会(ACCA)所属だが、当時(おそらくは今も)英国の会計士資格と米国の会計士資格の相互承認が為されていなかった。会計制度の違いも今よりは大きかっただろうが、一番の理由はUS CPAが大学卒を資格の条件としていたのに対し、ACCAは大学卒を条件としていなかったこととされていた。
 
同様なことが日本の会計士資格でも起きようとしている。
 
今後世界の会計基準IFRSに向かう中で、会計士資格の相互承認という話が当然に出てくる。その時に米国は「日本の公認会計士は大卒を資格要件にしていないので、相互承認はできません」と言うであろう。逆方向は外圧に押されて承認してしまうのかも知れないけれど。
 
とは言っても、監査証明にサインしなければ問題にならない話であろうし、目くじらを立てるべきではないのかも知れない。
 
ところでこの高校生はこのあとどうするのだろうか。
 
公認会計士になるには実務経験を積まないといけないのだが、試験に合格しても監査法人に就職できない人が大量に出ている中で、高卒で監査法人に入れるだろうか。そうすると大学を出てからということになるが、そうすると今から5年後?
その時までに日本の会計基準は大きく変わっている。その間の変化を全てフォローし続けるのだろうか。そうでないならば、16歳で合格はしたが、知識はその当時のままで時代遅れとなっている人間を監査法人が雇うであろうか。
興味深いところである。
 
英米のように、まず監査法人に就職してからその後に公認会計士試験を受験する。但し一発で合格していかない人は辞めていくという制度の方が健全かも知れない。若年合格を目指してしまう人や、試験合格を目指して就職浪人を続ける人を無くすためにも。