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「あえて英語公用語論」船橋洋一著 文春新書

「あえて英語公用語論」船橋洋一著 文春新書

少し前に読み終わっていたのですが、書く時間がありませんでした。

これを読んだからといって英語ができるようになるわけではないのですが、これまで英語公用語論反対論者、早期英語教育反対論者の著作ばかり読んできたので、反対側の意見は新鮮でした。

ブックオフ105円の本ですが、一読をお薦めします。

確かに鈴木孝夫氏が、「日本人みんな英語を必要とするわけではない。日本語を世界に広めれば英語を学ばなくても良い。そうは言っても当面は国会議員や一部のサラリーマンだけしっかりやる必要がある」と言うのを聞くのは心地よいものがありますが、そうは言っても日本語が世界に広まると言う可能性は小さいであろう。

そんなときに、本書の言うように、インターネット時代には一部の英語使いでは足りず、個人のレベルで受発信していかないと、日本は世界に参画できないとか、英語を知ることで自分の世界が広がっていくことを知った国民レベルからのボトムアップで、英語を第二公用語としたいというニースが出てくるという主張は、理解できるものがある。

朝日新聞コラムニストの筆者だけに、世界各地の事例を引いているのも説得力がある。

TOEFL の点数が低いと言うが英語の授業時間数は「中学校では年間117時間。自国語を非常に大切にするフランスですら173時間」(17ページ)

中・高・大学と10年間英語をやったと良く言いますが、実際に英語をやっている時間は多くないのであろう。

アメリカのイマージョン教育(118ページ)の話。日本語クラスもある。

カナダバイリンガル政策(133ページ)も興味深い。英仏双方を公用語としたために、かえってケベック以外のフランス語圏の人たちは英語に流れたらしい。

公用語は義務ではなく、権利であるということに注意をしないといけない。

カナダはいろいろな公文書英語フランス語の双方で作成しないと行けないので大変なコストになっている。

日本の場合も日英双方を公用語とするならば、お役所の書類はかなりの部分日本語英語で作成することになる。

他方、住民の方は、英語が必須になるのではなく、選択できるということである。

英語は第二公用語ということであるから、日英のバイリンガル教育を選ぶか、日本語を主とした教育を選ぶと言うことであるが。

この背景として、日本労働力不足を補う為に海外からの移民を受け入れなければいけない時期が来る。その為にも英語を第二公用語にしなければならないというものである。

果たして一般庶民はそこまでの覚悟はできているのであろうか。

外国人流入治安の悪化に繋げる傾向のある日本人が、外国人受け入れのために英語公用語にするのであろうか。

かつてボートピープルと呼ばれたベトナム難民が出た時期に、「日本は文化が違いすぎるし言葉も難しいから」と言って受け入れを拒んだ日本が、「英語が通じる国にするから、日本に働きに来て良いよ」という風に態度を変えるというのであれば、それは歓迎すべきものであるが。

読み終わってから時間が経ってしまって、ややぼけてしまいました。残念

「あえて英語公用語論」船橋洋一著 文春新書