語楽カフェ

趣味としての外国語学習

「英語を制する『ライティング』」キム・ジョンキュー(講談社現代新書)

「英語を制する『ライティング』」キム・ジョンキュー(講談社現代新書)

昨日発作的に新刊で買って、今日読み終わりました。

ブックオフで105円で売られていても買ってはいけない本でした。

久々に「お金と時間を返してくれ」という本でした。

その本について、この時間に感想を書いているのもさらに腹立たしいのですが、さらに犠牲者が増えないようにと。

講談社もこんな本出すようじゃ駄目ですねぇ。

この本の主張は

・本物の英語力とは、英語力+論理的な展開能力 (ただし、これについては著者ははっきりと書かず、後者のみがポイントのような書き方をしている)

・それを身につけるには、ライティング、特にパラグラフライティングが有効である

・ただし、それは独学では身につけられず、きちんとした講師に見てもらう必要がある

・ところが、日本に来る外人講師は、レベルが低くてそのようなチェックができない

・よって、日本でそのような能力を身につけるのは不可能ではないかも知れないが難しい

というものです。

著者がアメリカ国語として英語を習ったときの経験を元に書いているのですが、大多数の読者にとってアクセス不可能な勉強手段を提示して、あたかもそれが解決策であるかのように提示するのでは、何の役にも立ちません。絵に描いた餅です。

腹立たしいのは、解決策を提示しているかのような印象を与えるこの本のタイトルでしょう。

騙されてたくさんの人が買うことを狙ったとしか思えません。

これが、「アメリカ国語教育を受けて感じた、今後の日本英語教育への指針」などのタイトルであれば、長期的な指針として納得する部分はあったかも知れません。

しかし、そうであっても、同様に外国で学んで、論理的展開能力を日本語で身につけるべきと発展させた三森ゆりかの「外国語を身につけるための日本語レッスン」(白水社)が既に出ている中で、何の新鮮味もありませんでした。

第一章の英会話学校批判も、言い古された話ですが、新鮮だと思ったのは、英会話教室が出会い系サイトに近づいていると言い切っていることや、女生徒目当てにやってくる北米大学生講師の話でしょうか。

第三章で、しっかりした先生がなかなかいないという話の中で、英語教師資格と目されるTESLやTEFLが、半年、あるいは6-10週間で取得可能な資格で、米国本土の「国語」の先生からは評価が低いことや、Nova の採用基準は、1-2年の大学教育を受けたものということで、大学2-3年生でも講師ができることなどは面白かったです。

最終章では、米国で、第二言語として英語を学ぶ移民などのための授業では、会話中心の授業であるのに対し、外国語としてフランス語を学ぶアメリカ人の授業では、文法読解作文中心だったということが面白かったです。著者は差別と呼んでいますが。

以上のように、スキャンダラスに面白いという点はあるものの、外国語学習のヒントという意味では、全くの無駄でした。

どなたかお読みになりたい人は、定価でお譲りします。