語楽カフェ

趣味としての外国語学習

2008-02-12

[]029号 バイカルチャーについての二冊 22:11 029号 バイカルチャーについての二冊 - 語学の虎の巻 [書評]英語・外国語学習法 を含むブックマーク はてなブックマーク - 029号 バイカルチャーについての二冊 - 語学の虎の巻 [書評]英語・外国語学習法 029号 バイカルチャーについての二冊 - 語学の虎の巻 [書評]英語・外国語学習法 のブックマークコメント

 

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英語・仏語・伊語 トリプル三冠王による

語学の虎の巻 [書評] 英語・外国語学習法 - 029号 -

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遅い夏休みでメルマガを一回お休みさせて頂きました。

旅行先で大風邪を引いて、ヘロヘロになって戻ってきたところです。

 

 

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こちらです。

http://shibutora.g.hatena.ne.jp/melma/20070620

 

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■今週の本 

1「バイカルチャルになれる人・なれない人」

2「バイカルチャーと日本人」

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買う??: ★☆☆☆☆

特にお薦めしません。

最近流行のインターナショナルスクール/アメリカンスクールについて

興味のある方は2が良いかも知れません。

 

「バイカルチャルになれる人・なれない人」 本田正文

丸善ライブラリー 1999/10

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「バイカルチャーと日本人」 櫛田健児

中公新書ラクレ 2006/4

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■エッセンス

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たまたま手元にバイカルチャーの本が二冊あったので、合わせて読んで

みました。

 

1は、言語学が専門の先生の本です。 

最初の10ページは面白かったのですが、残りはパッとしませんでした。

 

参考文献への言及が多く、大学生のレポートのような書き方に違和感を

持つ人もいるでしょうし、著者の書きたかったことが

 

バイリンガルとバイカルチュラルの関係

・著者自身の体験談

バイリンガルとは何か

 

と、三つくらいあって、それが新書一冊に押し込められていることから

焦点がぼけていると感じる人もいるでしょう。

 

 

2は、日本生まれのハーフの著者が自分のアメリカンスクールでの経験と、

聞き取り調査に基づき書いたもの。

学問的には整理されていない感じがありますが、アメリカンスクール

実態などを知るには良いと思います。

 

 

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■内容&感想

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バイリンガルとバイカルチュラルの話は良く出てきます。

 

通訳や翻訳の世界、或いは、外国の書物や映画を楽しむ場合において、

語学に関する知識も当然ながら、その裏の文化的背景を知らなければ

ならないと良く言われます。

 

もちろん、ピュアに言語だけバイリンガルな、「機能的バイリンガリズム

(functional bilingualism)」も存在するわけですが、上に挙げたような

状況では、文化背景を知っておくことで理解度が一層高まるでしょう。

 

バイリンガルの定義も様々なものがある中で、バイカルチュラルの定義も

色々あるのだと思います。

この点で、両書とも定義が曖昧な感じを持ちました。

 

1においては、「異文化の中に身をおき、その言語を母国語として使っている

人々の中でバイリンガルになった人、例えば、アメリカで日本人が英語を

マスターして、且つ、日本でもアメリカでも十分に機能できる人のことを

『バイカルチャル』の人と呼ぶことにする」(3ページ)とあります。

 

2においては、「『2つ以上の社会文化への対応が出来る』ことである。

たとえば、『日本の一般社会の文化圏』と『日本以外の文化圏』の両方に

対応していることなどである」(55ページ)とありますが、2で具体的に

語られるバイカルチャーの判断基準は「ノリの良さ」「会話の運び」「議論の

進め方」などで、我々が通常イメージする文化とはずれています。

 

モノ/バイリンガルとモノ/バイカルチュラルの組み合わせを考えることは

面白いと思います。

 

1によれば、インド人は母語の他に共通語として英語を学ぶことから、「バイ

リンガルではあるが、バイカルチャルではないことになる」(4ページ)

これによれば、アメリカ人がインドに行って英語で生活するならば、モノ

リンガルでバイカルチュラルということになるのでしょう。

 

2においては、この辺りの例示が貧困で、バイリンガルだがモノカルチュラル

の例として、「スタンフォードで叩かれた日本人の教授」が挙げられており、

またモノリンガルだがバイカルチュラルの例として、日本人が社会人として

行動するときの切り替えが挙げられています。

 

我々にとってバイカルチュラルであることが重要であるのは、英語以外の

外国語が第二言語である場合でしょう。

 

英語とのペアの場合は、もちろん文化的背景が必要になる状況も引き続き

あるわけですが、様々な国の人がいろいろなバックグラウンドを背負って

発する英語を相手にする際に、バイカルチュラルの相手は何になるので

しょう。

その時は、バイをとっくに突き抜けてマルチになっているのでしょうが、

そのような場所では特定の文化的背景に依拠した表現が回避されるでしょう

から、文化的知識については、もっと薄まったもので足りるのだと思います。

 

この二冊を読んでの私の違和感は、どちらの本も「バイリンガルを目指す

ならバイカルチュラルを目指せ」というメッセージを持っていることです。

 

イカルチュラルの定義が明らかでないときに文句を言っても仕方がない

のかも知れませんが、「異文化の中でバイリンガルになるためには、バイ

カルチャルにならないといけないことは確かである」(1より 159ページ)

などと断定されてしまうと反発してしまいます。

 

「バイカルチュラル」と言うときの「文化」の定義をきちんとする必要が

あるでしょう。

 

私自身がイタリア、イギリス駐在において、言語、それも金融・経済周辺

のみを学び、文化的なものにほとんど触れてこなかったと言う反省・後悔が

あり、他方、まあまあのレベルの語学力を身につけたという思いもあります。

 

文化というものが、2の著者が言うように、会話のノリであったり、進め方で

あったり、ということであれば、それは三森ゆりかが「外国語を身につける

ための日本語レッスン」等で書いていることです。

そうであれば、私は通算12年半の海外駐在の中で、英米伊のやり方は

ある程度分かったと思いますし、その点ではバイカルチュラルになれた

のかも知れません。

 

他方、通訳・翻訳で必要になってくるような普通の意味での「文化」に

ついては、私はほとんど触れないまま海外駐在を終えてしまいました。

この意味では、モノカルチュラルです。

 

振り返ってみると、私自身、文化的なものについて(それが日本のもので

あっても)あまり興味が無いのかも知れません。

 

そうであるならば、バイリンガル/モノカルチュラルという生やさしい

モノではなく、バイリンガル/ゼロカルチュラルという情けない状態に

なっているのかも知れません。

 

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発行者略歴

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澁澤寅彦 (しぶさわとらひこ) (ペンネームです)

1962年生まれ。福井県出身。証券会社の経理マン

 

2002年から2005年の四年間に、英仏伊の3カ国語それぞれで三冠

(ガイド試験、検定1級、EUのC2レベル試験)を達成した。

 

寒いので「ゆたぽん」抱いて寝ています。

 

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メルマガ名: 語学の虎の巻[書評]英語・外国語学習法

発行者 : 澁澤寅彦 ( [send email to shibu.tora@gmail.com via gmail] shibu.tora@gmail.com)

発 行  : まぐまぐID= 0000238273

配信停止 : http://blog.mag2.com/m/log/0000238273/

 

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